2016.07.23

ベルリンアイアンについて。

ベルリンアイアンと呼ばれるジュエリーがあります。
「19世紀初頭戦争の戦費を賄うために民間から金などを徴収した代償としてプロシア政府が作り人民に与えた鋳鉄製のジュエリー、表面に黒漆をかけたものが普通」
とアンティークジュエリー本には書いてあります。
艶消し、やや艶ありの真っ黒なもので、透かし模様のデザインが多いです。華やかさはないけどマニア受けするジュエリーです。
といった記事をちょうど10年前に書いています。
10年前?!えっ10年前?そりゃ当時ガンプラ作ったりケロロ軍曹みたり銀魂観てた甥っこが成人するはずだよね〜。しみじみ。

閑話休題
ベルリンアイアンは19世紀初頭に作られたものだと約200年経っています。現存しているベルリンアイアンジュエリーは状態が良いものでもどこかに赤錆が沸いていたり、地金が折れていたりします。今はレーザー溶接機を使えば折れた地金を溶接することは出来るようになりました。その修理の後、赤錆を取り除き、仕上げに漆のようなものでコーティングします。
そこで、実際に漆を焼付けてみる実験をしてみました。というのが10年前のこれらの記事です。
ベルリンアイアン、実験。
ベルリンアイアン、実験2。
結局、質感はほぼ同じになるけれど、19世紀初頭のヨーロッパには漆はないよね、ということで漆のような何かが何なのかは調べないまま今に至っています。

そして最近このような論文があることを教えてもらい、読んでみました。
「ドイツにおける漆芸の発展と普及」
琥珀樹脂を使用した高品質なラッカーが1757年に考案された。
しかもベルリンはその漆芸品の主な産地だった。ということはベルリンアイアンにそのラッカーが使われていた可能性は高いのでは、と考えまして。
琥珀使って実験してみたくなりました。成功すれば完璧は修復が出来るじゃないですか!!

とはいえ実際ベルリンアイアンの修復はそんなに需要があるわけではないし、そこまで完成度を求められもしません。が、漆に憧れてヨーロッパが考案した漆っぽいラッカーを漆の国の人が作ってみるのもまた一興かなと。
実験結果はまたご報告します。
10年後になったりしてね。

| | コメント (2)

2015.10.28

トレンブランブローチの構造

先日、東京国立博物館表慶館で開催中の「アート オブ ブルガリ  130年にわたるイタリアの美の至宝」
展を観て来ました。ということで久しぶりにアンティークジュエリーについて。

ブルガリ展、トレンブランブローチというものが何点か展示されてました。
アンティークジュエリーではおなじみの機構のブローチですがどんな物かというと、花と葉のついた小枝のようなデザインで花の下に小さなバネを仕掛けて身に着けた人が動くと花がふるふると揺らめくという仕掛けになっているブローチです。Googleの画像検索を見ると分かり易いかも。

ふるふると繊細に震えることで花にセットされたダイヤがキラキラ煌めくという仕様なのですね。
1800年代に流行ったスタイルで、蝋燭の灯りの下でとても綺麗に煌めいたのではないかと思います。
ブルガリ展のトレンブランブローチは1960年制作のものでアンティークとは少し違い宝石がメインの作りになっています。

花の下にバネ仕掛けといっても展示されているものは裏側は見ることが出来ないし、展示中は揺らすことも出来ないのでどうなっているのかよくわからないと思います。

ということで以前作ったバネ仕掛けの制作過程見ながら機構を説明していきます。

アンティークのトレンブランブローチはその仕掛けの部分が壊れたり、無くなってしまったりということが多々あります。なのでバネ仕掛けの部分を直したり、新たに作ったりします。
トレンブランの機構はいくつか種類がありますが、今回はブルガリのブローチと同じ作りであろうという
もので説明します。

花の下の箱の中に時計のゼンマイのようなコイル状のバネが入ってます。ブルガリのブローチも横からみたらこの箱が見えました。
Photo

このネジを芯にしてバネを巻いていきます。横のパーツは後で使う。
Photo_2

バネを巻き巻き。このバネの厚さも取り付ける花の重さ等で調整しないと繊細な動きになりません。
とにかく微調整が難しいです。根気あるのみ。
Photo_3

巻いては揺れ方をチェックして調整を続けます。
Photo_4

バネ調整後、箱にセット。箱の大きさとバネの強さも動きに関係します。
Box

こんなかんじで箱完成。ネジの横にあったパーツは簡単に言うとバネの動きを制御するためのもの。
箱に入れてからも微調整を繰り返すかんじ。
2

完成したらネジで取り付けます。
2_2

といった作りになってるんですね。作るパーツも多くないし、難しいものはないけれどとにかく調整に根気がいる仕事です。
これはかなりいい揺れ加減に出来上がりました。動画をお見せ出来ないのが残念。

トレンブランブローチを見かけたら、こういう構造になってるんだなぁと思ってください。
見えない機構の部分ですが、とっても繊細に作られているんですよ〜。


| | コメント (2)

2011.12.08

シールフォブ。

12月ですよ、12月。
月日が経つのが早すぎる〜。

さて、今回はシールフォブです。オーダーメイド。
ブロンズとカーネリアンのインタリオはオーダー主さんの持ち込みです。

ブロンズにはシルバーのイルカデザイン。西洋の彫刻(イタリアの噴水とかにあるような)のイルカをイメージしています。鯱っぽいですが、洋風なのです。
1

5

カーネリアンのインタリオには金。
ヴィクトリアン時代のアンティークを参考にしてます。
1_2

4


インタリオの図柄はこんなかんじ。スカルピーに押してみました。
2

やっぱりインタリオはいいですねぇ。私も小さいインタリオをコツコツと集めているので、いつかシールフォブを作りたいな〜。

3

| | コメント (0)

2009.10.25

撥鏤、ばちると読む。

以前、もう3年ぐらい前の記事で作りかけて放置していた染めた象牙をやっと形にしてみましたよ。

染めた象牙に模様を彫ってという技法は「撥鏤(ばちる)」といって、正倉院の宝物にもあります。
で、今年も正倉院展が始まりました、観に行きたいー。


蝙蝠柄です。なんか綺麗なのでエメラルドも入れてみた。
2

せっかく染めた象牙を台無しにしそうでなかなか模様を彫れなかったんだけど、拙くても大丈夫っぽい模様にして何とかまとめたかんじ。「日本のジュエリー100年」の図録に載っている簪の柄を参考にしてます。
3jpg

裏にも蝙蝠。ハロウィンっぽい。
6

最後に磨いたら、色が薄くなってしまい、正倉院の撥鏤の色のイメージではなくなってしまいましたが、まぁいいかー。
7

ということで、これで帯留めとか作ってみようかなと思って象牙削りました。
8

そして染めました。クリスマスぐらいまでには仕上げたい。
9

余談。
象牙を染めるために鍋に染料入れて弱火で煮込みつつ、発売されたばかりの「聖☆おにいさん」4巻を読んでいたら、なんか焦げ臭い匂いがしてきた。鍋かけてるのすっかり忘れて漫画に熱中、危うく象牙を焦がして台無しにするとこでした。いい歳こいて漫画読んでて鍋焦がすなんて情けない、、、。


| | コメント (5)

2009.07.20

虫ですよ。

いやー、暑くなって参りましたね。
今回は虫作りました。
アールヌーボーのペンダントで、本物の虫が石のようにセットされている物がありまして、玉虫みたいな虫です。で、その虫がボロボロになってしまったので新たな虫をセットして欲しいという依頼がケンズショップにありまして。でも本物の虫だと敬遠する人もいるだろうからということで、石と金で虫作ってそれをセットすることになったのです。
蝶の羽を使っているジュエリーはありますけど、本物の虫を丸ごとセットしてあるジュエリーは初めて見ました。100年ぐらい前のものだし。
ちなみに以前、蝶の羽の使われているイヤリングを修理したことがあって、最後の最後の仕上げで水を染みさせて羽の色を変色させてしまい、半泣きで虫屋さんに行って蝶の標本買って来たことがあったなー。

ラブラドライトのルース。
Photo

それをダイヤモンドポイントで削って虫の胴体っぽくします。
Photo_2

で、頭はワックスで作って金にします。
Photo_3

金になってからちょっとテクスチャー付けたり、石にセットするための芯を立てたりします。
1


2

頭はこんなかんじで完成。
Photo_4

石と合わせるとこんなかんじ。あまりリアルにしすぎるのもどうかと思ったので、このぐらいのかんじに抑えました。参考にするために黄金虫や玉虫のアップに写真を見過ぎてちょっと気持ち悪くなったし。
Photo_5

残念ながら、ペンダントにセットしたとこはここには載せられないのですが。もしかしたらケンズショップのHPに載るかもです。

これ作ってたらクワガタとかカブトムシとか作りたくなった。夏だしね。
その影響なのか、この夏はクワガタ柄とカブトムシ柄のTシャツ買ってしまいましたよ。

| | コメント (5)

2008.09.07

カメオ展始まりました。

ということで、カメオ展の準備を終えて無事に東京に戻ってまいりました。

彫刻の森美術館に行っていたけれど、けっこう押せ押せだったので、会場以外全く観ることは出来ませんでした。ま、しょうがない。
Choukoku

んで、箱根湯本に泊まって、車で20分ぐらい山道を登って通っていたんだけど、朝の8時半にホテルを出て、夜の12時ぐらいに帰ってくるという日々で、最後の日はホテルに帰ったのが朝の4時半ぐらいで、ちょっと寝て8時半にホテルチェックアウトして会場に行って内覧会前の最終チェックするという日々だったので、辛うじてホテルの大浴場で温泉に浸かることは出来たものの、帰り道にちょっと何処かに立ち寄って観光気分を味わうということ叶わず。それでも他の人たちに比べたら早く帰れて楽な方だったんだけど。
Hakone

そんなこんなで、よい展示になったと思いますので、興味のある人は箱根へGO!してください。
図録の写真が超絶綺麗でいいですよー。10月26日までやってます。

続きを読む "カメオ展始まりました。"

| | コメント (0)

2008.08.30

カメオ展やりますよー。

9月6日から箱根彫刻の森美術館で「カメオ展」宝石彫刻の2000年 アレキサンダー大王からナポレオン3世まで という展覧会が開催されます。
世界中のカメオ、インタリオが400点近く展示されます。しかもどれも一級品です。

現代物のカメオというと貝に彫られた女性の横顔を思い浮かべると思いますが、それらとはかなりイメージが違うかな。貝に彫ったシェルカメオよりも石に彫ったストーンカメオのほうが圧倒的に多いし。神話とか聖書を題材にしたものや英雄やギリシャの哲学者や古代ローマの皇帝などなどいろんなモチーフがあります。アグリッパもあって受験の石膏デッサンを思い出したり。
ジュエリーの展覧会というより彫刻といったほうが合ってる気がします。
驚くほど緻密に彫られていて、こんなもの造れる作家や職人にジェラシー(笑)。
ちっさい物が多いので観に行く時はミュージアムスコープ持参がお勧め。掌に収まる大きさで、あの緻密さはたまらんですよ!

ということで、今週はずっと都内某所の倉庫で展示の準備してました。明日から
5日まで箱根で展示準備してきます。出稼ぎ。温泉には入れるのだろうか?

ということで、メールなどのお問い合わせの返信は6日以降になってしまいます。どうぞよろしくー。
Kame

スッポンモドキ君。いちおう亀。

| | コメント (3)

2007.09.06

「ベル・エポックの輝き」展の宣伝。

大丸ミュージアム・心斎橋で9月5日から9月17日まで「ベル・エポックの輝き」展
やってます。大丸ミュージアム・神戸は9月19日から10月1日まで。東京の大丸では12月に開催するそうです。
ベル・エポックとはフランス語で「よき時代」の意味。
19世紀末から第一次世界大戦勃発(1914年)ぐらいまでのパリが繁栄した華やかな時代だそうです。

この展覧会に出品されるジュエリーの点検などをお手伝いしたわけです。
アールヌーボー、アールデコの時代なので、それ系のジュエリーが多いです。ラリック作もあります。
ジュエリーは40点ほどですが、少数精鋭なかんじでいい物ばかりなのでアンティーク好きには堪らんのではないでしょうか。
私は、コンクパールというコンク貝から採れるピンクのパールを使ったティアラが好きです。金で葉っぱと蔦が作ってあり、コンクパールは木の実に見立てて配されてるという物で、ダイヤモンドは使われてないので一見地味ですが、かわいいしセンスのいい作りしてんなーと感心しました。
ガラス工芸品も展示されてます。これは北澤美術館からラリックやガレの作品が展示されるそうですが、私はまだ未見です。見たいなー。自腹で大阪行ってこようかなー。

んで、前にも書きましたが、この展覧会のショップでシルバージュエリー販売してます。
印章をモチーフにしたキーホルダーとペンダント、30点ほど。
その一部をご紹介します。
K01r

K06c

印章から型取りしたプレートを使って作ってます。胸に十字架が見えるので十字軍をモチーフにしてるのかな?と思いますが、何せ昔の物なので彫られた模様の正確な由来はわからんのですよ。

K04r

これは古代のコインから型取りした物。アテナのシンボルは知恵を表すフクロウが彫られてます。

P15

船に乗ったキューピッド(天使?)の模様。意味は不明。
店では「羽があるなら飛べよ」と言われてる一品。

P19

蜜蜂とキューピッド。
キューピッドを天使の見分けは難しいけど、蜜蜂と一緒に描かれる場合はキューピッドだというお約束があります。

印章には神話のモチーフが彫られていたり、持ち主の信条が彫られていたりします。
少しずつ調べてるけど、ラテン語だったりするのでなかなか意味を明確に知る事が出来んのです。
それを調べたり、こんなんかなーと想像するのもけっこう楽しかったりするのですが。

ということで、お近くにおいでの際は是非お立ち寄りを!
私の夏はこれ作ってて終わったので思い入れたっぷりです!

| | コメント (4)

2007.01.21

ティアラ展始まったよ。

Photo_10

やっと準備が終わって展覧会が始まりました。今週からは通常業務に戻れますー。
気が付くと一月も後半になってるし、、、。

3_16

以前サンプル作ってボツになったティアラリング。
イメージとしてはナポレオンの月桂樹の王冠なのね。
顔とか描いて遊んでたのがいけなかったのか?
ティアラリングいっぱい作ってミニティアラ展したらかわいいだろうなー。

| | コメント (4) | トラックバック (0)

2007.01.13

ティアラ展の続き。

King2

引き続き、ティアラ展の準備してます。
昨日は裏方で働くおじさんの取材らしく、テレビカメラ来てました。ケンズの親方は朝の出勤風景からカメラに撮られてました。面白い。
それと、ティアラを何点か撮ってたのですが、宝石を撮るのは大変そうでした。どういう映像になっているのか楽しみです。
働く親方の姿は、夕方のニュース番組で放送されるらしいので、皆で観て笑おうと思ってます。

ダイヤはお腹いっぱいなどと贅沢なこと言ってたけど、これだけの細工のものが揃うことは今回限りのような気がするってくらい見るべき物が多いですよー。彫金やってる人は必見だなと思う。
本体がティアラの軸にネジ留めになっていて外すとネックレスになる造りの物が何点かあったし、10以上のパーツに分解出来てそれぞれにブローチの金具がセット出来る造りの物もありました。専用のドライバーも付いている。ドライバーの柄が象牙だったりするし。ネジって素敵と感動した(笑)。
展示にそういう説明があるのかはわからないけど、よく見るとわかると思うので、そういう楽しみもありますよー。

皆で、「これならがんばれば作れる気がする」とか「これは絶対無理!」とか言いながら楽しく作業してるのだ。後半大変になってくる予感、、、。

| | コメント (3) | トラックバック (0)